としぼーさんによる、11/28新宿リキッドルームで行なわれたヤポネシアン・ボールズ・ファウンデーション / Japonesian Balls Foundationのライヴレポート。
自分の意図した人生を送ることができない。
怠惰な性癖を矯めることができずに生きてきた。
俺はこの秋、29歳になりました。
挑み、失敗し、奮い立たせ、また、挑み、失敗する。己の非才と無能を受け入れられず、俺は未だに正職に就くこともできない。受け入れてしまえば、もう、情熱の炉に火がはいることはないのではないかという恐れがそうすることを拒ませる。30歳を目前にして、努力を継続することが才能なのだというあまりにも素朴で当たり前のことに気付く。
手遅れ。
あまりに多くの水が、橋の下を流れた。
だが、虚仮の一念とは恐ろしい。俺は、再び、月に手を伸ばすだろう。
中川敬の言葉に、常に圧倒され、打たれ、赤ムケにされてきた。
♪全くどうして? 自尊心だけ強くて
あの町この町 流れ歩いた訳だろ?
一体何を落としたか? 一体何を落としたか? 教えて
[ Newest Model:Crossbreed Park「乳母車と棺桶」より ]
♪君のくすぶり発火しないよ
遠いクニへ夢はデカイよ
始まることがない不思議(何もしないね)
OH! こたつ内紛争
出られないまま 時が過ぎて行くよ
あきらめゆく箱のなかで
[Newest Model:Soul Survivor「 こたつ内紛争」より ]
♪大きな栗の木の下 あなたと私
汚れた雨を避けながら 踊り明かそう
大きな顔で振る舞う ひしゃげたプライド
おまえの街ならその顔も 通用するだろう
[ Newest Model:Crossbreed Park「杓子定木」より ]
♪かなわない広さや深さに出会った時
立ちすくみ漂うことを誤魔化せないよ
[ Newest Model:Crossbreed Park「漂えど沈まず」より ]
こうした情け容赦ない言葉が、繊細であり、骨太でもある重層的な曲と共に放たれたとき、必ず、いつか、コレを平然と聴ける人間になりたいと願った。このグルーヴに全体重をゆだねて踊るときを夢見た。
だが、「ひと昔」を意味する年月が過ぎた今も、これらの言葉と音の前で、俺は愚かな10代のまま。
♪「これ以上悪くなりはしないさ」誰かが歌ってる
「同じ轍を踏むことはない」道なき道をゆけ
「死人ほど死んだものはない」哀しみの丘を越え
「この世に遠くない道なんてない」終りのない旅に出る
見守ってくれ 遠い夜空から ただひとつ 彼がやり遂げるまで
[ Heat Wave:日々なる直感「ガーディアン・エンジェル」より ]
このようなヒートウェイヴの言葉と音の前でも、俺はオロオロとしてしまう。生きてきたというだけの、天下無用の男でしかない。
ずいぶん面倒な音楽の聴き方をするものだと思う方もいるだろう。だが、仕方がない。俺にそのように接しせしめる力が音と言葉に備わっていたのだから。音楽でも映画でも小説でも、接した人にその人自身の歴史や他人との関係に思いを至らせる作品が、最上のものではないか。まぁ、ひとそれぞれかもしれないが・・・。
ロクでもない私事を書き連ねてしまった(これも音楽の力ではないか!)が、この十数年間、ニューエスト・モデル、メスカリン・ドライヴ、ソウル・フラワー・ユニオンの音楽を糧に、武器に、言い訳に、発奮剤にして生きてきた。そこに、2001年、ヤポネシアン・ボールズ・ファウンデーションが加わる。
はたして、俺を鼓舞するのか、へこませるのか?
ソウル・フラワー・ユニオンのレコーディングとツアーに貢献してきた山口洋、長年、ヒートウェイヴのベースを担ってきた渡辺圭一、昨年暮れにソウル・フラワー・ユニオンのドラムスとなったコーキ、そして中川敬の4人が一体どんな音と言葉を投げかけてくるのか?
7時15分過ぎ、ほぼ満員のリキッドルームに最初に放たれた曲は、後期ニューエスト・モデルがカヴァーしたヴェルヴェット・アンダーグラウンドのWe're Gonna Have A Real Good Time Together(邦題 おもろのきわみ)だった。
センターマイクにベースの渡辺が、客席から見て左に中川、右に山口が立ち、ドラムにコーキ。なんと、リードヴォーカルを渡辺がとっている。いいのだこれが、凄くいい。普段、ソウル・フラワーのライブで、様々な楽器のデカイ音の渦に慣れているのでやけに新鮮に感じる。まぁ、音が小さい訳でもないのだけど。なにしろ、山口のヴォーカルも明瞭に聞こえる。ソウル・フラワーのライブで初めて聞いて好きになった「トーキョー シティー ヒエラルキー」の歌詞が分かる。「荒れ地にて」の中川の歌いっぷりには、胴が震えた。1曲目以降は山口と中川が交互にヴォーカルを取った。
中川は自身のソロアルバム『ソウルシャリスト・エスケイプ』の中から、「おんぼろの夜明け」「おやすみ」を披露。山口も92年発表の『陽はまた昇る』の中から「明日のために靴を磨こう」を繰り出す。横揺れの波がフロアを行き来する。渡辺の泣きのベースラインに気分良く俺も揺れていたら、中期ニューエストの名曲「もぐらと祭り」がプレイされている。新曲「Big Apple」「パンチドランカーの夢」の出来も良い。今後、ライブで成長すること間違いないと確信する。メロディが、やけに印象的だ。
さて、この夜も爆笑MCが炸裂。約15分の休憩(笑)を挟んでステージに出たあともギャグの連発。下手な芸人より面白い。客とのやりとりも多くて、一瞬お笑いライブ会場にいるのかと錯覚してしまった。
閑話休題。後半、ラモーンズのカヴァーヴァージョンのDo You Wanna Dance?をやったと思えば、カーティス・メイフィールドのPeople Get Readyが。Do You Wanna Dance?は、高校生のころ俺もバンドでコピーしていたものだから踊りに踊った。あっ、ポゴダンスはしなかったけど。
このバンドの今をカタチにしてほしいと、ライブを見ながら思っていた。ソウル・フラワーでもヒートウェイヴでもない空気がすでに生まれていると感じたからなのだが、正月にレコーディングに入るらしい。笑い話しの中で山口が口にしたものだから、半信半疑だったのだが、どうやら本当のようだ。新曲「Big Apple」には、9.11のニューヨークの大惨事とその後の道義なきブッシュアメリカ政権の戦争に対する彼らの意見が反映されているはずだ。こういうものは早く世に問うべきだと思う。迅速なリリースを期待したい。
3時間のライブは、中川と山口の共作曲「満月の夕」で終わった。
まわりの皆の笑顔から、期待していたものを過不足なく手にした満足を勝手に感じとり。俺もあんな顔してんだろうなと思いながら、長い階段へと急いだ。階段を駆け下りながら、友人たちの顔が浮かびました。会いてぇな、と思いました。他人との関係性だけが、俺の全てだ、失いたくない、と思いました。この夜のライブで。
報告します。
新しいバンドが生まれました。
JAPONESIAN BALLS FOUNDATION です。
(敬称は略させていただきました。)
2001/12/21
筆者:としぼー